概要 General information
設計
建築・構造・設備 トポスペース建築研究所
用途 専用住宅(二世帯)
敷地面積 233.92㎡
建築面積 94.49㎡
延床面積 131.16㎡
階数 地上2階
工期 2016年6月~2016年11月
所在地 熊本県熊本市中央区
図面 Plan,Section,Elevation and 3D
設計者へのインタビュー Interview
Q1: デザインのコンセプトはどういったものですか?
A1: 当初、RC又はS造を希望されましたが、予算の関係で木造を採用することになりました。「いわゆる木造住宅に見えないものにしてほしい」との施主の要望を最大限に考慮した、外観と構造のおさまりがひとつのポイントになっています。さまざまなスタディーの結果、余計なものをそぎ落としたシンプルな形態を活かすデザインが生まれました。
Q2: 周辺環境とはどのような関係が考えられていますか?
A2: 計画地は住宅が密集した中心市街地に位置します。そこで、敷地の「余白」に着目しました。建物ボリュームをいくつかに分割すると、その建物の周りに性格の異なる余白が生まれます。こうしてできた敷地の余白と内部空間に積極的関係を持たせた計画になっています。
西側市道、南側の私道(私有地)との関係や、二世帯のプライバシーを保つための中庭の距離感を「グラデーションにする」ことで、心地よい曖昧な領域を形成しています。
この「空間のグラデーション」というのは、敷地の余白空間によって生まれる「ヒト-モノ-コト」の関係性の濃淡のことです。
本計画により生まれた敷地余白で行われる人々(この建物の住み手と近隣住民などのコミュニティ)の利用シーン(ヒト-コト)、あるいは緑など(植栽、ガーデニング、家庭菜園など)を置くことによる緩衝地帯としての空間(モノ-コト)の「濃淡が生まれること」を指しています。
このような敷地余白により、プライバシーを確保しつつ、心地よい距離感の生まれる空間形成を目指しました。
Q3: コスト削減についてはどのような工夫がされていますか?
A3: ゾーニング計画をシンプルに考え、おおまかに1階親世帯、1階子世帯、2階子世帯の3つの構成としています。水回りも二世帯分必要になりますが、それぞれ集約させることでコスト削減を図っています。
内装壁、床の塗装は、施主と施主の友人と設計者によるセルフビルドとすることで、建設コストを抑えながら、建築を身近に感じてもらえる機会を持つことができました。この取り組みによって、将来にわたり建物に関心と愛着が生まれ、さらにこの建築が進化していくことを期待しています。
Q4: 施主側の希望にはどのようなものがありましたか?また、それはどのように空間に反映されていますか?
A4: 施主である御主人はファッション業界の方です。毎日、出勤前にその日の衣装を決める際、靴を一緒にコーディネートしたいとの要望がありました。また、お母様はテレビ番組『所さんの世田谷ベース』の大ファンで、モノづくりが大好きな方であり、屋内床は土間にしたいとの御要望がありました。奥様もケンチク好きの方で、屋内土間床には賛成とのことでした。
そこで、屋内床をすべて土足仕様にして、西欧的なスタイルである「靴履き生活」を採用しています。これが、HOUSE-Oの最大の特徴で面白い部分です。
床の土足化はもともと施主側の要望に沿ったデザインだったのですが、結果的に屋内外の関係性を曖昧なものとする効果も生んでいます。例えば、中庭テラスや西側の前庭や南側のプライベート庭などは、敷地内の屋外空間ですが、内外の差を意識することなく生活空間の一部として頻繁に使われているようです。
さらに、この屋外空間に簡易テントなどを張ってしまえば、屋内と繋がる居住空間を簡単に拡張できます。このような空間利用のフレキシビリティーの高さもHOUSE-Oの魅力のひとつといえます。
回答者:柿内毅 Takeshi KAKIUCHI, may 2018
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