ウチにマチをつくる

既設の特別養護老人ホームの通所デイルームに「マチ」をつくる」プロジェクト。

施設を最初に訪れたのは約1年ほど前。当時から、何となく木製柵やのれんを活用して仕切りながら作られた利用者の居場所があった。もともと約250㎡もあるデイルームに、使われながら自然とそれらのボリュームが出来たのだろう。その大きさは、利用者にとって心地よい空間のように見えた。そこで、その一つ一つの仕切られたボリュームを「お家」に見たてて、デイルームの中に家をつくる「入れ子」形式で性質の異なる居場所をいくつか作った。既設天井のスプリンクラー設備はそのまま利用するので、スプリンクラーからの離れや高さの隙間空間、ピッチ等の規定を満足するように、木材をルーバー状に組んでいき「イエガタ」を作った。

完成して間もなく利用者の方々が、笑顔で使われている姿をみて、計画から工事完成までの苦労がすべて吹っ飛び、自然とこちらも笑顔になっていった。この瞬間が、設計をやっている醍醐味である。

次のプロジェクトの打合せのために施設を訪れた時、想像を超えた使われ方に感激した。なぜなら、「餅投げ」が行われていたのである!。家ができる時は、当然の行事であるから当たり前といえばそうだが、「イエガタ」を受け入れて頂いているように思えて大変うれしかった。