【建築展解説】01 可能性としての木造:建築の日本展

01 可能性としての木造

最初のパートは木造についての展示があります。展示内容を要約すると、以下のようになります。


古寺院などに見られる日本の伝統的な建築様式は木造の架構を採用しています。大陸からもたらされた木造架構の技術は、和様化の進行により、日本的環境に合わせて緻密さを増していきました。継手・仕口のバリエーションなどは、木造架構の合理性が追求された結果といえるでしょう。水平材と垂直材の接合部についても、釘を使わない構法は、地震で受ける水平力を分散して吸収する制震構造にもなっています。

そのような木造架構は分解が可能であり、移築という選択肢を提供することにもなりました。これらの特徴は、時代を超えて近現代の建築にも受け継がれているのです。たとえば、アンビルドプロジェクトであった空中都市 渋谷計画(磯崎新、1962)には、柱と梁の架構が、垂直・水平方向に伸びるコアや動線として直截的に表現されています。

また、東照宮などにみられる五重塔の心柱の持つ制震構造の考え方は、新しい材料と技術によって東京スカイツリー(日建設計、2012)に活かされています。さらに、木材に等方性と安定した性能を持たせるために作られたエンジニアリングウッドによって、木造の概念は拡張され、木造超高層の可能性も視野に入って来ているのです。