【建築展解説】02 超越する美学:建築の日本展

02 超越する美学

2番目のパートは、日本的美の特質についての展示があります。展示コンセプトを要約すると、以下のようになります。


テーマに示された「超越する」とは、目の前に示されたモノとしての建築が、その美的な価値によって、建築を統御する「論理を超える」という意味で使われています。建築は具体的な材料を使い、モノとモノとの組み合わせとして構築されます。西洋建築の考え方では、とにかく目の前に厳然たる存在としてのモノの塊があることが、建築美を認識する前提条件です。

これに対して、日本の建築的伝統は、いくつかの異なる位相から建築美を規定します。

まず、モノの実体というより、モノが置かれている状況に注目するのです。龍安寺の石庭は、15個の石の配置やその余白となる白州の平面に美を認めます。

また、現前に存在しないことについて、その美を論じようとするのです。鎌倉時代の歌人である藤原定家が詠んだ「見渡せば 花も紅葉も なかりけり 浦の苫屋の 秋の夕暮れ」は、その典型といえます。

さらに、モノの持つ属性を可能な限り削除していくことで、逆に内在的な力を顕現させる表現を好みます。これは、白木の構成による伊勢神宮正殿や、打ち放し鉄筋コンクリートの鈴木大拙館(谷口吉生、2011)に共通の、緊張感に満ちた美学です。